2017年04月27日

突発性難聴の鍼灸医学的分類(4)

症例

〈血瘀症(けつおしょう)による突発性難聴〉

46歳 Cさん 男性 会社員(営業)

症状
   @右耳難聴(全音域高度難聴70〜80dB)  
   Aめまい(浮遊感)   
   B耳鳴り(サーッという小さめの音)  
   C閉塞感(物を詰められている感じ)

状況 
   発症前日、右耳の奥にツーンとした閉塞感あり。それが夜になって抜けなくなった。
   翌日午前中、右耳が聞こえていないことに気付いた。 
   耳鼻科受診の結果突発性難聴と診断。
   検査を受けている間にめまいと吐き気に襲われて総合病院に入院を勧められた。 
   9日間入院し、ステロイド点滴と血流促進剤、ビタミン剤投与するも改善なく退院。
   退院後、ネットをみて来室。(発症13日目)

既往歴 
   特にないが、この数年、会社の健診で高脂血症と肝機能の数値が高い。
   治療はとくにしていない。
    
問診
   主訴以外では
   @立っているとフラフラ、浮遊感少しある
   A右肩が発症前ひどく凝って、もむと痛いので湿布を貼っていた

生活面、食事面、嗜好品について
   5年前に離婚。食事は外食が多い。
   アルコールは強くはないが、好きでよく飲む   
   タバコ喫煙本数 1日15本

舌診
   舌色は赤黒く、汚斑が点在
   舌苔は黄色くべったりとして、所々剥離あり

脈診
   心、肝の脈が浮いてやや強し
   腎の脈は沈んで弱し

腹診
   右わき腹から肋骨にかけて圧痛あり
   みぞおちから中脘部にかけて不快感あり

ハリ治療2.jpg

経過
   初回治療後、めまいがひどくなり不安だったが、翌日治まった。
   10回までは集中治療を実施。
   集中治療後半にはふらつきや頭痛、肩の痛みが半減した。
   15回治療後、聴力検査の結果は平均10dB程度改善。
   28回治療後は50〜60dBの中程度難聴まで改善するも耳鳴りと耳閉感は続いている。

考察
   Cさんは比較的早い段階で治療開始されたので
   もう少し改善できるかなと思っていましたが、やや厳しい状況が続いています。
   入院中の聴力はスケールアウト状態だったので、障害の程度が大きかったのだと思います。
   ※ スケールアウトとは聴力測定不能のことです

   東洋医学的には、瘀血(おけつ)による血行不良が原因と考えられます。
   瘀血というのは、よく言われる「ドロドロと粘っこい血液」の状態です。

   Cさんの瘀血は会社の健診結果ではひどい状態ではなかったように思えますが
   耳に栄養と酸素を運ぶ血管は細く、バイパス血管がありません。
   今回は過労、睡眠不足などいくつかの要因が重なって血流が滞ってしまったのだと考えられます。

   突発性難聴治療と並行してCさんには生活面、食事面の見直しにより、
   瘀血の改善に取り組んでいただいています。

CHNU001.jpg

   今回は突発性難聴という形で耳に症状が出ましたが、血液状態の悪さは全身に影響を及ぼします。
   ガンや脳卒中、心臓病、糖尿病などのやっかいな病気にもつながることをお話し、
   具体的な改善方法などもアドバイスをさせていただきながら治療を続行中です。

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2017年04月19日

突発性難聴の鍼灸医学的分類(3)

症例

<腎虚(じんきょ)が主因の突発性難聴>


29歳 Bさん 女性 主婦

症状 
    @左耳難聴 とくに朝が調子悪い
   A低い音が聞き取りづらい
   Bときどき頭痛 そのさい軽いめまいがする時がある


状況 1か月前に左耳に発症
   1週間後に近くの耳鼻科受診
   中程度低音域難聴との診断で通院治療
   ステロイド点滴およびビタミン剤と血流促進剤を1週間服薬するも効果見られず
   (※ 発症前、旅行先で寒い思いのあと風邪をひいた。なお9か月前に出産あり。)

既往症 中学時代にメニエール病を発症(服薬治療で治癒)
     花粉症

問診 主訴以外には
   冷え症 とくに足が冷えてつらい、むくみやすい、腰に重い痛み、
   冷飲物を好む、ときどき動悸、疲れやすい、だるい 肩コリ

CHTI016.gif

舌診 全体的にはれぼったく舌の辺縁に歯型がみられる
   舌そのものは淡紅色

脈診 腎経、肝経の脈が沈みがちで弱い 脈拍の乱れは少ない

腹診 全体的に冷たく臍下(へその下)の張りが弱い
   へその左横に圧痛あり 

経過 初回の治療翌日は軽いめまいと耳鳴りも出て不安だった。
   翌々日になって、それらは消失。
   2回目の治療時の腹診で、へその左横の圧痛半減
   舌の歯型も減、尿回数増えてむくみが少し楽と。

   7回治療後から朝の聴こえづらさが解消され、
   10回治療後に聴力検査を実施。
   250Hzが50→40dB、500Hzが40→30dB、
   1000Hzが35→25dBとそれぞれ改善

   21回治療後の検査で250Hz以外の数値が20dB以内となり完治
   月1回のフォロー治療を1年間実施して終了

考察 Bさんの場合はもともと腎経が弱い「素体腎虚(そたいじんきょ)」体質がベースにあり、
出産により腎虚状態が強まり、さらに旅行で寒い思いをしたのがこたえたようです。
ハリ治療と並行して食事の改善や体を冷やさない生活を心がけていただきました。

聴力の回復につれて、便秘、肩コリ、腰痛も改善がみられました。
腎虚は誰でも年齢とともに進みますが、
Bさんのようなもともと体質的に弱い方は注意が必要です。

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2017年04月07日

突発性難聴の鍼灸医学的分類(2)

症例 

<肝気鬱結(かんきうっけつ)が主因の突発性難聴
>

42歳 Aさん 男性  高校教員

症状 @右耳の難聴と耳鳴り
   A目から首にかけてのコリ
    肩から腰にかけてのコリ
   B軽いめまいと不安感
   C耳閉感(水中にいるような違和感)

CHTI007.gif







状況
 来室2か月前に突然聴力低下。
   総合病院耳鼻科で検査の結果、突発性難聴と診断。
   7日間入院し、ステロイド点滴とビタミン剤、血流促進剤服用するも改善見られないまま退院。
   高音域の難聴で通院治療を続けてきたが思わしくなく、ハリ治療をネットで見つけ来室。
   
既往歴 10年以上前に過呼吸症候群を発症のことあり
    それ以来、心療内科に通院中(ときどき不安感でるため)
    職場の検診や人間ドックでは取り立てて異常はなし

問診 主訴以外には
   頭重感、不安感、浅眠、ときに不眠、冷え症、動悸、むくみやすい、疲れやすい、汗が多い
   
舌診 舌苔、舌色等は所見なし、舌を突き出す際多少の震えあり

脈診 一部の脈が緊張気味で時々不整脈あり

腹診 全般的に硬い
   とくに肋骨の下(季肋部)やみぞおちが押されると不快な感じと。

経過 初回の治療のあと、よく眠れた。
   4回目の治療あたりから、耳鳴りが少し小さくなった。
   肩こりもやや楽になった。

   7回目の治療あたりから、職場での耳鳴りがあまり気にならなくなった。
   腹診、脈診に変化が出てきた。以前よりイライラが減った気がするとのこと。
   ただ、日によって調子の波がある。

   12回の治療後に病院で聴力検査実施。
   このころには耳閉感やめまいも軽くなったと自覚あり。
   1000,2000,4000Hzの聴力が平均で15db程度改善あり。
   その後も治療を継続し、42回で8000Hz以外はほぼ完治となり終了。
   時々フォロー治療で来室中。

考察 Aさんの場合は仕事柄、神経を使う毎日でのストレスが主因と考えられます。
   蓄積されたストレスは東洋医学では肝経(かんけい)、心経(しんけい)といった
   ツボの流れに異常をきたし、最終的には肝臓病や心臓病にもつながっていきます。
   ストレスは万病の元ですが、突発性難聴の原因としても大きな原因となります。

   上手にストレスを発散することや食事面、運動面などのアドバイスのほか
   自律神経の緊張をほぐすツボ押しを自宅でもやっていただきました。
   たまに治療に来られますが症状の波も小さくなり日常的にはほぼ問題なさそうです。

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2017年03月29日

突発性難聴の鍼灸医学的分類(1)

突発性難聴は名前の通り突然発症します。
そして原因が解明されておらず、根本的な治療法も確立されていません。

私自身、突発性難聴の鍼灸治療を手掛けるようになって10年経ちました。

なんとか治療の効果を高めるべく試行錯誤を続けています。
タイプ別に分類をしてツボの選択を少し変えてみることにより、
より良い結果が得られるようになってきました。

多いタイプが次の4分類です。

@ 肝気鬱結証(かんきうっけつしょう)タイプ

A 腎虚証(じんきょしょう)タイプ

B 血瘀証(けつおしょう)タイプ

C 血虚証(けっきょしょう)タイプ

専門用語のためわかりづらいと思いますが
ざっくりと言ってしまうと

肝気鬱結証はストレスが主原因のタイプ

腎虚証は冷えや体質的な面での問題が主原因のタイプ

血瘀証は血液が粘ったりドロドロ血液が主原因のタイプ

血虚証は食生活や体質的な面での問題が主原因のタイプ


お一人お一人状況が違います。
またひとつのタイプとは限らず2つ以上のタイプが
混在しているケースも多いので簡単ではありません。
しかし、分類することにより治療の方向性や方針が立てやすくなります。

次回から具体例を挙げてなるべくわかりやすく書いてみたいと思います。


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2017年03月03日

63歳の誕生日

20代、30代の頃、私には60代の方がウンと老けて見えました。(失礼!^^;)
そんな自分が先日63歳になりました。
若い方から見ると、初老のおじさんですね。

でも気持ちはまだ50代前半くらいです。
まだまだこれからです。
こうして仕事を続けられる肉体と精神を維持するために、月1回は自分自身の体のケアを恩師の先生にお願いしています。
そして私を支えてくれる家族、友人、患者さん、周囲の方々に感謝します。

これからも謙虚に勉強を続け、健康にも注意して頑張っていきますのでよろしくお願い申し上げます。

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posted by かもめ at 15:39| 神奈川 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 自己紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月13日

新しいスタッフ

新年おめでとうございます。
今年もよろしくお願い申し上げます。

実は新年早々、風邪をひきました。
寝込むほどのものではありませんでしたが、
本当に久しぶりの風邪でした。
物事は良いほうに考えて、いいタイミングで引けて良かった。

風邪が治ってからの初詣で引いたおみくじは

大吉!

でした。

油断することなく今年も健康第一にマイペースで頑張ります!

最近、頼もしいスタッフが加わりました。
人間ではありません。
お掃除ロボットです。(笑)


一日の仕事が終わったあと、
待合室と受け付けルームの
モップ掛けをやってくれます。

DSC_0016.jpg

このふたつのエリアはフローリングなので
時々はモップ掛けをしているのですが、
梅雨時や夏はどうしても手抜きをしたくなります。
そこでロボット君を採用したわけです。

濡れモップをはさんで
一生懸命に拭きまわる姿がなんとも健気で
ついつい見入ってしまいます。(笑)

私の予想を裏切り、実にまじめです。
応援したくなります。

彼に名前をつけました。

「カモメンテ」

私の相棒として一緒にがんばってくださいね。^^)

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2016年12月29日

年末年始休診のお知らせ

今年も残すところ、今日を入れて3日になりました。
今年も皆様のおかげで続けられました。
ありがとうございました。

12/31〜1/4は臨時休診となります。

1/5(木)から診療を開始します。
通常、木曜午後は休診ですが1/5は行っておりますので
午後をご希望の方はご連絡ください。

IMG_0119.JPG







皆さま良いお年をお迎えください。
来年もよろしくお願い申し上げます。

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posted by かもめ at 15:42| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ・日々の雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月15日

腎兪(じんゆ)と健康

「一番大切なツボってありますか?」

こうした質問をたまに受けます。
ツボの数はWHO(世界保健機構)認定のものだけでも361あります。

それぞれに効能効果があり、
その組み合わせにより働き方も変わってきますので
どれが一番というのはありませんが、
私自身、一番使っているのが腎兪というツボです。


腎兪は腰椎の2番と3番の背骨の間から外側へ
3p位のところにあります。

治療に来られている方、ほとんど全員に
このツボにはハリかお灸をしています。

患者さんによっては多少の“響き(ひびき)”
(チクッとしたり、ズンと感じたり)を与えます。

ハリ治療2.jpg

東洋医学の古典には、
老化は腎の衰えから始まることや、
水分代謝、脳髄の働きや体温調節、
はては耳の働きを支えていること
なども記述されています。

女性では月経、妊娠、出産などにも
深く関与していると書かれてあります。

尿の生成が促進されるせいか、
治療直後にトイレに行きたくなったり、
翌朝のオシッコの勢いが良くなったりすることで
実感できることもあります。

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2016年11月21日

室内にも植物を

ミニ盆栽がブームだそうです。
なんとなくホッと癒されるからでしょうか。
室内に植物を置くと、健康にとても良いことが分かってきました。


たとえば空気中の炭酸ガスを吸って酸素を作り出してくれたり、
タバコの煙などの有害物質を無害化してくれたりします。


葉の表面から水分を蒸発させるので
部屋の湿度をコントロ−ルしてくれ、
さらに微量の芳香成分も出ていて
精神安定作用もあるそうです。

28ILAX27.BMP


最近はフィトンチッド効果も確認されています。
植物が外敵である虫から身を守るために放出している天然成分で、
その防虫・抗菌効果により、観葉植物を置いた部屋では
カビやバクテリアの数が半分以下に減少する、
という研究結果も発表されています。


植物は葉から水分を蒸散させる際に、
マイナスイオンを放出しています。
ときどき霧吹きで葉水を与えると、
マイナスイオンがさらに増えます。


そして、たまには葉を拭いてあげるとさらに良いようです。
マイナスイオンがダニの発生を抑制し、
喘息やアトピー性皮膚炎を軽減してくれるという報告もあります。


各部屋に置いて、
楽しみながら
毎日の健康に役立ててみてはいかがでしょうか?

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2016年11月10日

温湿布療法

ひどい痛みではないものの、慢性的に腰や肩がつらい方、
特に冷えると症状の悪化する方に
ぜひおすすめなのが、温湿布療法です。

今回はこんにゃくを使う方法と、
ショウガを用いる方法を紹介します。

こんにゃく温湿布療法

こんにゃくを使った温湿布の特長は、
温かさが持続すること(15〜20分)、
湿熱のため内部への浸透力が強いので
よく温まり、冷めにくいのが特長です。

特に、腰やおなかなど
平らで広い面を温めるには最適です。

用意するもの
@角こんにゃく(なるべく厚めで大きいもの、小さいものなら2枚を重ねて使用します)
A乾いたタオル3〜5枚

CHTI059.gif

やりかた
沸騰したお湯で10〜15分、こんにゃくをグツグツと煮たあと
タオルに包みつらい部分に当てます。
熱くなれば、場所をずらしたり
タオルをもう一枚多くしたりして、
熱さを調節してください。
※やけどにご注意ください。

生姜蒸しタオル温湿布

熱いお湯にショウガの絞り汁を入れ、
やけどをしないようにゴム手袋をはめて蒸しタオルを作ります。
ショウガは血管を拡張させ血流を良くしてくれます。

患部の芯が温まるまで何回か繰り返します。
蒸しタオル温湿布は肩や膝など、
こんにゃく温湿布がやりにくいところも簡単にでき、
準備も簡単で手軽にできます。

なお、ショウガは入れすぎると皮膚がピリピリしますので、
初めは少なめから始めて下さい。

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posted by かもめ at 15:52| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 東洋医学・鍼灸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする