2017年04月30日

突発性難聴の鍼灸医学的分類(5)

症例 

血虚(けっきょ)が主因の突発性難聴


35歳 Dさん 女性 主婦

症状 
    @左耳の突発性難聴(中音域)
    A耳閉感(耳の奥が塞がっている感じ)
    B自分の声が耳の中で響いて不快

状況
    朝起きた時に左耳の奥が塞がる感じがした
    かかってきた電話で左耳の異変に気付いた
    その日の午後に耳鼻科受診 突発性難聴と診断

    30〜40dBの軽度難聴だったのと授乳中だったので通院治療になった
    ステロイドは使わず、ビタミン剤と血流促進剤の点滴を1週間実施。
    効果がいまいちだったので高圧酸素療法を併用するもパッとせず来室。    
 
CHTI017.jpg

既往歴 特になし

問診  主訴以外では
    @子ども2人(6歳と1歳の男児)、下の子はまだ授乳中
    A幼少のころから耳が弱く、風邪引くとよく中耳炎を起こした
    B若いころから生理不順と貧血 
    C慢性的に不眠、動悸、指先のしびれ
    D顔色がやや青白く、皮膚が乾燥しやすい

生活面での特記事項として
   @食が細く、食べ過ぎるともたれてつらい
    A20代前半まで会社勤めをしていたが、原因不明のめまいで退職

舌診
   舌は薄くやや白っぽい色
   舌の中央に縦長の亀裂あり

脈診 全般的に弱く、とくに腎の脈が沈んで細い

腹診 へその下の皮ふ弾力が弱い
   全体的に張りが無くカサカサしている感じ
   冬はあちこち強いかゆみが出る

経過 初回の治療後、帰宅途中は耳閉感や反響音の改善を感じた
   翌朝、耳閉感はなかったが反響音がまた出ていた
   特に台所や浴室の換気扇の音が不快に感じる
   
   10回の集中治療のあと、聴力測定の結果500Hzと1000Hz以外は正常値に入った。
   右耳に比べると電話での会話が少し聞き取りにくいが日常的には不便なし。
   
   11回目からは週2回に治療ペースを落として2ヶ月間実施。
   徐々に換気扇の音も気にならなくなったが、寝不足したり疲れた時に軽いめまいや動悸あり
   ご主人の転勤のため治療は計22回で終了した。
   セルフケアを毎日やることと貧血を改善するための生活上のアドバイスを行った。

考察 貧血がベースになっている突発性難聴が女性でよく見られるます。
   東洋医学では血液が不足、すなわち「虚(きょ)」の状態ということで「血虚(けっきょ)」といいます。
   血流量が不足したり、量はあっても貧血状態の血液でも起こります。

   Dさんの場合、血流の悪さと血液状態の貧弱さの両方により突発性難聴が起きたと考えられます。
   もともとの貧血体質に加え妊娠、出産、産後の睡眠不足やストレスで発症したものです。
      
   胃腸も虚弱で食事も少量しか摂れないので、耳の治療に加え胃腸の働きを改善させる治療も
   並行して行いました。
胃下垂の改善のため、短時間でも運動を毎日心がけるようにアドバイスをしました。

CHEX066.jpg
  
  定期的に血液検査をしながら場合によっては栄養剤や鉄剤の点滴も有効です。
  耳の治療については引越し先で継続されてもいいし、セルフケアでも多分大丈夫と思います。

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2017年04月27日

突発性難聴の鍼灸医学的分類(4)

症例

〈血瘀症(けつおしょう)による突発性難聴〉

46歳 Cさん 男性 会社員(営業)

症状
   @右耳難聴(全音域高度難聴70〜80dB)  
   Aめまい(浮遊感)   
   B耳鳴り(サーッという小さめの音)  
   C閉塞感(物を詰められている感じ)

状況 
   発症前日、右耳の奥にツーンとした閉塞感あり。それが夜になって抜けなくなった。
   翌日午前中、右耳が聞こえていないことに気付いた。 
   耳鼻科受診の結果突発性難聴と診断。
   検査を受けている間にめまいと吐き気に襲われて総合病院に入院を勧められた。 
   9日間入院し、ステロイド点滴と血流促進剤、ビタミン剤投与するも改善なく退院。
   退院後、ネットをみて来室。(発症13日目)

既往歴 
   特にないが、この数年、会社の健診で高脂血症と肝機能の数値が高い。
   治療はとくにしていない。
    
問診
   主訴以外では
   @立っているとフラフラ、浮遊感少しある
   A右肩が発症前ひどく凝って、もむと痛いので湿布を貼っていた

生活面、食事面、嗜好品について
   5年前に離婚。食事は外食が多い。
   アルコールは強くはないが、好きでよく飲む   
   タバコ喫煙本数 1日15本

舌診
   舌色は赤黒く、汚斑が点在
   舌苔は黄色くべったりとして、所々剥離あり

脈診
   心、肝の脈が浮いてやや強し
   腎の脈は沈んで弱し

腹診
   右わき腹から肋骨にかけて圧痛あり
   みぞおちから中脘部にかけて不快感あり

ハリ治療2.jpg

経過
   初回治療後、めまいがひどくなり不安だったが、翌日治まった。
   10回までは集中治療を実施。
   集中治療後半にはふらつきや頭痛、肩の痛みが半減した。
   15回治療後、聴力検査の結果は平均10dB程度改善。
   28回治療後は50〜60dBの中程度難聴まで改善するも耳鳴りと耳閉感は続いている。

考察
   Cさんは比較的早い段階で治療開始されたので
   もう少し改善できるかなと思っていましたが、やや厳しい状況が続いています。
   入院中の聴力はスケールアウト状態だったので、障害の程度が大きかったのだと思います。
   ※ スケールアウトとは聴力測定不能のことです

   東洋医学的には、瘀血(おけつ)による血行不良が原因と考えられます。
   瘀血というのは、よく言われる「ドロドロと粘っこい血液」の状態です。

   Cさんの瘀血は会社の健診結果ではひどい状態ではなかったように思えますが
   耳に栄養と酸素を運ぶ血管は細く、バイパス血管がありません。
   今回は過労、睡眠不足などいくつかの要因が重なって血流が滞ってしまったのだと考えられます。

   突発性難聴治療と並行してCさんには生活面、食事面の見直しにより、
   瘀血の改善に取り組んでいただいています。

CHNU001.jpg

   今回は突発性難聴という形で耳に症状が出ましたが、血液状態の悪さは全身に影響を及ぼします。
   ガンや脳卒中、心臓病、糖尿病などのやっかいな病気にもつながることをお話し、
   具体的な改善方法などもアドバイスをさせていただきながら治療を続行中です。

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2017年04月19日

突発性難聴の鍼灸医学的分類(3)

症例

<腎虚(じんきょ)が主因の突発性難聴>


29歳 Bさん 女性 主婦

症状 
    @左耳難聴 とくに朝が調子悪い
   A低い音が聞き取りづらい
   Bときどき頭痛 そのさい軽いめまいがする時がある


状況 1か月前に左耳に発症
   1週間後に近くの耳鼻科受診
   中程度低音域難聴との診断で通院治療
   ステロイド点滴およびビタミン剤と血流促進剤を1週間服薬するも効果見られず
   (※ 発症前、旅行先で寒い思いのあと風邪をひいた。なお9か月前に出産あり。)

既往症 中学時代にメニエール病を発症(服薬治療で治癒)
     花粉症

問診 主訴以外には
   冷え症 とくに足が冷えてつらい、むくみやすい、腰に重い痛み、
   冷飲物を好む、ときどき動悸、疲れやすい、だるい 肩コリ

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舌診 全体的にはれぼったく舌の辺縁に歯型がみられる
   舌そのものは淡紅色

脈診 腎経、肝経の脈が沈みがちで弱い 脈拍の乱れは少ない

腹診 全体的に冷たく臍下(へその下)の張りが弱い
   へその左横に圧痛あり 

経過 初回の治療翌日は軽いめまいと耳鳴りも出て不安だった。
   翌々日になって、それらは消失。
   2回目の治療時の腹診で、へその左横の圧痛半減
   舌の歯型も減、尿回数増えてむくみが少し楽と。

   7回治療後から朝の聴こえづらさが解消され、
   10回治療後に聴力検査を実施。
   250Hzが50→40dB、500Hzが40→30dB、
   1000Hzが35→25dBとそれぞれ改善

   21回治療後の検査で250Hz以外の数値が20dB以内となり完治
   月1回のフォロー治療を1年間実施して終了

考察 Bさんの場合はもともと腎経が弱い「素体腎虚(そたいじんきょ)」体質がベースにあり、
出産により腎虚状態が強まり、さらに旅行で寒い思いをしたのがこたえたようです。
ハリ治療と並行して食事の改善や体を冷やさない生活を心がけていただきました。

聴力の回復につれて、便秘、肩コリ、腰痛も改善がみられました。
腎虚は誰でも年齢とともに進みますが、
Bさんのようなもともと体質的に弱い方は注意が必要です。

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2017年04月07日

突発性難聴の鍼灸医学的分類(2)

症例 

<肝気鬱結(かんきうっけつ)が主因の突発性難聴
>

42歳 Aさん 男性  高校教員

症状 @右耳の難聴と耳鳴り
   A目から首にかけてのコリ
    肩から腰にかけてのコリ
   B軽いめまいと不安感
   C耳閉感(水中にいるような違和感)

CHTI007.gif







状況
 来室2か月前に突然聴力低下。
   総合病院耳鼻科で検査の結果、突発性難聴と診断。
   7日間入院し、ステロイド点滴とビタミン剤、血流促進剤服用するも改善見られないまま退院。
   高音域の難聴で通院治療を続けてきたが思わしくなく、ハリ治療をネットで見つけ来室。
   
既往歴 10年以上前に過呼吸症候群を発症のことあり
    それ以来、心療内科に通院中(ときどき不安感でるため)
    職場の検診や人間ドックでは取り立てて異常はなし

問診 主訴以外には
   頭重感、不安感、浅眠、ときに不眠、冷え症、動悸、むくみやすい、疲れやすい、汗が多い
   
舌診 舌苔、舌色等は所見なし、舌を突き出す際多少の震えあり

脈診 一部の脈が緊張気味で時々不整脈あり

腹診 全般的に硬い
   とくに肋骨の下(季肋部)やみぞおちが押されると不快な感じと。

経過 初回の治療のあと、よく眠れた。
   4回目の治療あたりから、耳鳴りが少し小さくなった。
   肩こりもやや楽になった。

   7回目の治療あたりから、職場での耳鳴りがあまり気にならなくなった。
   腹診、脈診に変化が出てきた。以前よりイライラが減った気がするとのこと。
   ただ、日によって調子の波がある。

   12回の治療後に病院で聴力検査実施。
   このころには耳閉感やめまいも軽くなったと自覚あり。
   1000,2000,4000Hzの聴力が平均で15db程度改善あり。
   その後も治療を継続し、42回で8000Hz以外はほぼ完治となり終了。
   時々フォロー治療で来室中。

考察 Aさんの場合は仕事柄、神経を使う毎日でのストレスが主因と考えられます。
   蓄積されたストレスは東洋医学では肝経(かんけい)、心経(しんけい)といった
   ツボの流れに異常をきたし、最終的には肝臓病や心臓病にもつながっていきます。
   ストレスは万病の元ですが、突発性難聴の原因としても大きな原因となります。

   上手にストレスを発散することや食事面、運動面などのアドバイスのほか
   自律神経の緊張をほぐすツボ押しを自宅でもやっていただきました。
   たまに治療に来られますが症状の波も小さくなり日常的にはほぼ問題なさそうです。

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2017年03月29日

突発性難聴の鍼灸医学的分類(1)

突発性難聴は名前の通り突然発症します。
そして原因が解明されておらず、根本的な治療法も確立されていません。

私自身、突発性難聴の鍼灸治療を手掛けるようになって10年経ちました。

なんとか治療の効果を高めるべく試行錯誤を続けています。
タイプ別に分類をしてツボの選択を少し変えてみることにより、
より良い結果が得られるようになってきました。

多いタイプが次の4分類です。

@ 肝気鬱結証(かんきうっけつしょう)タイプ

A 腎虚証(じんきょしょう)タイプ

B 血瘀証(けつおしょう)タイプ

C 血虚証(けっきょしょう)タイプ

専門用語のためわかりづらいと思いますが
ざっくりと言ってしまうと

肝気鬱結証はストレスが主原因のタイプ

腎虚証は冷えや体質的な面での問題が主原因のタイプ

血瘀証は血液が粘ったりドロドロ血液が主原因のタイプ

血虚証は食生活や体質的な面での問題が主原因のタイプ


お一人お一人状況が違います。
またひとつのタイプとは限らず2つ以上のタイプが
混在しているケースも多いので簡単ではありません。
しかし、分類することにより治療の方向性や方針が立てやすくなります。

次回から具体例を挙げてなるべくわかりやすく書いてみたいと思います。


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posted by かもめ at 08:56| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 突発性難聴と鍼灸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする