2008年05月02日

初恋と海

中学の同期会開催のハガキが届いた。
今まで幾度か誘いがあったが参加できずにいた。
その地には特別の思い出があったが、機会に恵まれなかった。


父の仕事で転校が多かった私は、誰一人友人のいない中学へ入学した。
東北は津軽の日本海に面した小さな港町で、卒業までの3年間を過ごすことになった。 
    
幼少から家庭環境に恵まれず、非行に走りかけていた少年がその町でひとりの少女に出会い、淡いときめきを覚えた。
嫌われたくない、良く思われたい、そんな気持ちが芽生え、育ち、少年を立ち直らせた。

彼女に出会わなければ今の自分はなかったかもしれない。
そんな人生の恩人が今もそこに住んでいる。


町は海岸段丘の上にあった。
鉄道が走る1段目と学校が建つ2段目は険しくそそり立つ高い断崖でさえぎられ、登校はつづら折りの坂道を幾度もスイッチバックしながら登ってゆくしかなかった。
きつい道だったが、段丘の上から見下ろす雄大な自然は、傷つき荒れていた心を癒してくれた。

恋に芽生えた少年は朝早く家を出て、つづら折りの頂上にある手すりから身を乗り出し、登ってくる生徒達の中に少女の姿を探すのがいつしか日課になっていった。

そこからは海岸線に沿ってうねうねと走り来る列車や、白い潮の泡を長く引きながら港へ帰る漁船、それにまとわりつくように飛び交うウミネコの群れなども見えた。
晴れた夏の海は強い陽光に反射して、無数の魚が海面で飛び跳ねているかのようにキラキラ輝いている。
そんな景色を眺めていると時間を忘れ、心が鎮まっていった。


いただいた5年前の同期会の集合写真で彼女は爽やかに笑っている。
「今回はかならず参加してくださいね。」とでも言っているかのようだ。
昔の面影をわずかに残す微笑みの向こうに、あの夏の海がパノラマのように広がって見えた。

今回はとってもメルヘンチックな文章になってしまいましたァ。^^)

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posted by かもめ at 18:53| ☔| Comment(7) | TrackBack(0) | エッセイ・日々の雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
素晴らしい表現の数々。文章がキラキラしています。(^ー^) ☆*..
中学の同期会、今回は出席出来そうですか?

「初恋と海」の続編を楽しみにしています。
Posted by 絵夢 at 2008年05月03日 01:06
絵夢さんへ
褒めていただいてありがとうございます。^^)
今回こそ出席したいと思っていますが、また前回のように突発の用事が起きないことを願っています。
お盆に開催ですので続編はだいぶ後でしょうねェ。
あまり期待しないで待っててください。笑)
Posted by かもめ at 2008年05月03日 22:02
素敵な想い出ですね
その方の存在だけで、かもめさんを立ち直らせただなんて、
どんな素敵な女性でしょう。
そんな女性に憧れます
Posted by サト at 2008年05月04日 09:57
サトさんへ
それだけ純真だったんですね。
あの頃の素直な心はどこへ飛んでいってしまったんでしょうか。(笑)
再会が楽しみなような、ドキドキするような、複雑な心境です。
ところで、サトさんだって素敵で、そのうえ尊敬できる憧れの女性ですよ。^^)
Posted by かもめ at 2008年05月04日 22:14
 
 初恋  いのうえ つとむ

初恋!初恋!初恋!
なんと
・・素晴らしいことでしょう
なんと
・・みずみずしい心でしょう

人生の出会いで
一番輝いている
初恋

その初々しい心を
・・胸の中に
今日も抱いている

老いて尚

 (2008・5・5)
この詩をかもめさんに差し上げます・・ね。

是非・・彼女にお会いくださいね・・でんちゃんは50何年めに70歳の時に同窓かで再会して・・本当に良かったですよ・・かもめさんのその後のキラキラ光る文章を楽しみにしていますよ。

Posted by でんどう三輪車 at 2008年05月05日 09:56
また機会がありましたらよろしくお願いします。
Posted by でんどう三輪車 at 2008年05月05日 12:06
でんさんへ
私のために作ってくれた詩、感激です。
本当にありがとうございます。(感涙)
その地は何せ遠く、交通もかなり不便なところで
たしか1日5本くらいしか走っていないローカル線です。
その分、自然が豊かです。
約40年ぶりの里帰り。
どんなになっているか、いまから楽しみです。^^)
Posted by かもめ at 2008年05月05日 16:06
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