症例
血虚(けっきょ)が主因の突発性難聴
35歳 Dさん 女性 主婦
症状
@左耳の突発性難聴(中音域)
A耳閉感(耳の奥が塞がっている感じ)
B自分の声が耳の中で響いて不快
状況
朝起きた時に左耳の奥が塞がる感じがした
かかってきた電話で左耳の異変に気付いた
その日の午後に耳鼻科受診 突発性難聴と診断
30〜40dBの軽度難聴だったのと授乳中だったので通院治療になった
ステロイドは使わず、ビタミン剤と血流促進剤の点滴を1週間実施。
効果がいまいちだったので高圧酸素療法を併用するもパッとせず来室。
既往歴 特になし
問診 主訴以外では
@子ども2人(6歳と1歳の男児)、下の子はまだ授乳中
A幼少のころから耳が弱く、風邪引くとよく中耳炎を起こした
B若いころから生理不順と貧血
C慢性的に不眠、動悸、指先のしびれ
D顔色がやや青白く、皮膚が乾燥しやすい
生活面での特記事項として
@食が細く、食べ過ぎるともたれてつらい
A20代前半まで会社勤めをしていたが、原因不明のめまいで退職
舌診
舌は薄くやや白っぽい色
舌の中央に縦長の亀裂あり
脈診 全般的に弱く、とくに腎の脈が沈んで細い
腹診 へその下の皮ふ弾力が弱い
全体的に張りが無くカサカサしている感じ
冬はあちこち強いかゆみが出る
経過 初回の治療後、帰宅途中は耳閉感や反響音の改善を感じた
翌朝、耳閉感はなかったが反響音がまた出ていた
特に台所や浴室の換気扇の音が不快に感じる
10回の集中治療のあと、聴力測定の結果500Hzと1000Hz以外は正常値に入った。
右耳に比べると電話での会話が少し聞き取りにくいが日常的には不便なし。
11回目からは週2回に治療ペースを落として2ヶ月間実施。
徐々に換気扇の音も気にならなくなったが、寝不足したり疲れた時に軽いめまいや動悸あり
ご主人の転勤のため治療は計22回で終了した。
セルフケアを毎日やることと貧血を改善するための生活上のアドバイスを行った。
考察 貧血がベースになっている突発性難聴が女性でよく見られるます。
東洋医学では血液が不足、すなわち「虚(きょ)」の状態ということで「血虚(けっきょ)」といいます。
血流量が不足したり、量はあっても貧血状態の血液でも起こります。
Dさんの場合、血流の悪さと血液状態の貧弱さの両方により突発性難聴が起きたと考えられます。
もともとの貧血体質に加え妊娠、出産、産後の睡眠不足やストレスで発症したものです。
胃腸も虚弱で食事も少量しか摂れないので、耳の治療に加え胃腸の働きを改善させる治療も
並行して行いました。
胃下垂の改善のため、短時間でも運動を毎日心がけるようにアドバイスをしました。
定期的に血液検査をしながら場合によっては栄養剤や鉄剤の点滴も有効です。
耳の治療については引越し先で継続されてもいいし、セルフケアでも多分大丈夫と思います。
Produced by かもめ針灸治療室
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2017年04月30日
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