2007年02月12日

父の入院(2)

北国行きの夜行バスは小雨の東北自動車道をひた走る。

缶ビールを飲み、いい気持ちで眠りに入ったが、2時頃には目覚めてしまった。

そこから先はトロトロ、ウトウト…。

周囲からはイビキも聞こえてくる。

ガターン、ゴトーン、ガターン、と周期的に下から衝撃が突き上げてくる。

カーテンの隙間から外を覗いてみるが、暗闇に小さな光が点滅しながら流れ去ってゆくだけ…。

数年前から認知症も少しずつ出始めた父の顔が浮かぶ。

弟の話では近所の家に押しかけて、

「お前の飼ってるカラスがうちの畑を荒らした!」と、怒鳴り込んだという。

入所先のグループホームでも少しトラブルを起こしていた。

体がまだ元気だからこそのトラブルだったが、今度は命が危ない状態。

けっして幸福だったとはいえない父の人生…。

眠れないまま時は過ぎ、カーテンの向こうは空が白み始めてきた。


高速を降り、一般道を走り始めた頃から何となく胸苦しさが始まった。

一瞬、いやな予感が頭をよぎった。

時間とともに吐き気が強まる。胸痛はない。

暗い車内をふらつく足でトイレに向かう。

ひどく吐く。吐いたらスッキリした。

単なる乗り物酔いだった。(爆)


朝9時、病室に着く。

父は眠っていた。

久しぶりに見る父はとても小さくなっていた。

ふさふさしていた髪もすっかり薄くなり、無精ひげも真っ白。

痩せ細った腕には注射の内出血痕が青黒く広がっている。

父のベッドを挟み、弟といろいろ話した。

週末の休みには自宅に連れ帰り、好物のおかずを作って食べさせたり、日帰り温泉に連れて行ったり、

近所を散歩させたりと、献身的に面倒を見てくれていることが言葉の端はしから伝わってくる。

これまで一番父を心配させたであろう弟が、今はこうして親孝行をしている。

自分は遠く離れて何もできずに済まない、という気持ちとともに、

父にとっては一番嬉しいことだろうな、とも思えた。


ナースが担当医に連絡してくれ、話を聞くことができた。

医師の話では

@検査データを見る限り入院時は極度の貧血状態だったが、

輸血と点滴でどの程度改善するか様子を見ている段階であること。

A昨日から吐き気も治まり、食欲が出てきたことからよい方向に向かっていて、

現段階で生命に危険はないこと。

B確定診断にはあと数日要するが、個人的には白血病の可能性は低いと考えていること。

ホッと安心したのもつかの間、ドクターの口から思いがけぬ言葉が…。

「貧血よりむしろ認知症のほうが心配です。

もう聞かれていると思いますが、昨日同室の患者さんとトラブルを起こしまして…、

それでICUに移ってもらいました。

夜もウロウロ徘徊したり、ナースステーションに入ってきておしっこしようとしたりと、

いろいろ問題を起こしています。」

施設でも、相性の悪いヘルパーのむなぐらをつかんだりしたことを弟から聞いていた。

「今度その兆候が出たときには、多少費用がかかっても個室に入ってもらうこともお願いするかもしれません。

もっとも、今日の朝食はきれいに完食していますので、この調子で行けば検査の結果次第では数日で退院も可能です。」

危険人物には早く出て行ってもらいたい、といわんばかりの言葉であった。

続きは次回で…。^^)

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posted by かもめ at 20:56| ☀| Comment(11) | TrackBack(0) | エッセイ・日々の雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今拝読していて・・20年前の父を思い出しました・・人は歳と共に病を背負い体が小さくなるのですね・・でんちゃんも2センチは背が低くなっています・・それにしても病院と言う所は利益第一で3ヶ月過ぎると横浜では出されますね・・田舎の母のところでは1ヶ月でした・・まもなく母は亡くなりました・・重体の患者を僅かな期間で他の病院に転院させる日本の医療の非人道的なのには怒りを感じます・・危険人物扱いにされるとは寂しいですね・・快方に向かわれる事を心からお祈りします・・応援のポチ。
Posted by でんどう三輪車 at 2007年02月13日 09:36
かもめさん、身につまされます。
実は、うちの母も先週、病院で骨折してしまいました。すぐに駆けつけることもできずにいるのですが、
いちばんの心配が認知症が出ることです。よく、骨折を機に認知症が進む人の話を聞きますので。

Posted by medwriter at 2007年02月13日 18:08
かもめさん、私の親友の姑さんが重い認知症で、看護疲れと、
協力しないご主人とのイザコザから鬱になってしまいました。
心優しい弟さんが疲れてしまわない様に、お父様には、
元気に回復して頂きたいですね。

Posted by 絵夢 at 2007年02月13日 18:50
でんさんへ

いつも応援ありがとうございます。m(__)m
でんさんもご両親の病気でいろいろご苦労されたようですね。
身長の2cm位、気にしない!気にしない!
でんさんは気力、体力ともまだまだ健在です。
これからもいい詩をたくさん書いてみんなを励ましてください。^^)


medwriterさんへ

そうですか…、北海道じゃ簡単には帰れませんね…。
こうなったら北海道取材の仕事をみつけてきて、ムリクリ最優先にしてしまうとか…。(笑
でもホント、笑い事じゃなく心配ですね。


絵夢さんへ

看病する友達が鬱になってしまったんですか…。
認知症はもはや他人事でなく身近な問題ですね。
その方、ブログとかで少しでもストレス発散出来ればいいかも…。
Posted by かもめ at 2007年02月13日 20:35
今日は春一番?・・夕方から強い風が吹きました・・幸い配達中はたいした事後なく・・12時事から2時まで横浜の松坂屋に書道の20人点を見てきました・・さすが代表的な先生たち・・素晴らしい作品に見とれてきました・・まずは応援のポチ。
Posted by でんどう三輪車 at 2007年02月14日 21:31
でんさんへ

いつも有難うございます。
昨日に続き今日も凄い風でしたね。
庭の鉢がいくつもひっくり返っておりました。
でんさんはひっくり返らぬよう気をつけてくださいね。(笑
Posted by かもめ at 2007年02月15日 21:56
かもめさん、大変だったんですね!
色々抱えながら、お仕事もあり、
ブログも書いて・・・・・
頭が下がります。
Posted by サト at 2007年02月16日 10:25
今日は晴天・・雲ひとつ無い空・・温かく散歩気分で配達してきました・・こんな日ばかりだと良いのですが・・人生と同じで・・きつい日もありますね・・応援していくね・・ポチ。
Posted by でんどう三輪車 at 2007年02月16日 17:53
サトさんへ

そんなふうに言っていただくと嬉しいです。
でも一切の面倒を見ている弟が一番大切です。
今回、兄と2人、大いに見直して弟株急上昇中です。(笑
サトさんこそ多忙な仕事と家事の合間にブログを書き、さらにいろんな勉強や研修、講習と寝る間も惜しんで努力されています。
私には3日間しかマネできないでしょう。(爆


でんさんへ

ホント、よき日あれば悪しき日もありですね。
いつも応援ありがとうございます。
週末はお天気、いまいちのようです。
風邪引かないでくださいね。
それこそいまいち説得力のない、かもめの言葉でした。(笑
Posted by かもめ at 2007年02月16日 21:48
今日は急にまた寒くなりましたね・・お互いに風邪を引かないようにしましょう・・応援のポチしていきます。
Posted by でんどう三輪車 at 2007年02月17日 19:57
でんさんへ

ホント、土曜から寒くなりましたねェ…。
今日は妻と江ノ島散策に行ってきましたが、いやぁ、風が冷たかったです〜。
知人は東京マラソン参加するといってましたが、風邪引いていなければいいですが…。
でんさんもお気をつけください。^^)
Posted by かもめ at 2007年02月18日 20:03
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