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梅雨寒の夕刻、ハナアオイが見たくて、傘を持って家を出た。
低く垂れ込めた鉛色の空の下、一面の田んぼのなかにその群生があった。
長く伸びた農道の土手に沿って、赤やピンク、白などが途切れることなく続いている。
まっすぐに立って咲く花姿がバレリーナのように毅然としている。
道の向こうから黒い犬を連れた女性が歩いてくるのが見えた。
上下とも白いジャージの飼い主と、寄り添うように真っ黒な大型犬が、
ハナアオイの咲く道をゆっくりと近づいてくる。
犬は時々飼い主を見上げては、歩調を合わせ進んでくる。
まるで、主人を気づかっているかのように…。
いよいよ近づくにつれ、今度は飼い主と私を交互に見比べ始めた、
一瞬、犬と目が合った。
不思議な眼をしていた。
人間のような、いや、人間以上に深い眼差しのように思え、頬がゆるんでしまった。
すれ違うとき、その女性は少し微笑み、軽く頭を下げた。
私も、会釈を返した。
まるで以前からの知り合いのように…。
通り過ぎたあとも、犬はうしろを振り返り、振り返り歩いていた。
とても姿勢のきれいな女性だった。
純白のハナアオイと重なって映り、その姿を立ち止まって眺めていた。
白と黒のコントラストが緑の風景のなかで、だんだん小さくなってゆく……。
フイに袖を引っ張られ、我に返った。
「将来、あんな犬飼いたいネ。とっても賢そう!」
妻の声に大きく頷き、あわてて傘をたたんだ。
いつのまにか雨はやんで、雲の切れ間から一筋、薄い夕陽が差し込んでいた。
Produced by かもめ針灸治療室
こんなにも褒めていただいて、とっても嬉しいです。
でんさんや、絵夢さんの詩や文章を読むたびに憧れている私にとっては、天にも昇るよう…。^^)
これからも、時々こんな文章にチャレンジしていきたいと思いますので、よろしくご指導ください。