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鍼灸院経営のヒント集(1)に戻る
患者さんとの信頼関係を築くためには、適度なコミュニケーションが必要と思います。
余計な会話をせずに、淡々と治療するほうがよいという考えもあります。
私は前者の考え方ですので、それに沿って書いてゆきますね。
コミュニケーションも、やみくもに取ればいいというものではありません。
時と場合を考えないと傷つけたり、信頼を失ったりします。
先日、娘さんをガンで亡くされたリピーターの患者さんが来られました。
こういうときの会話、どう考えればいいのでしょう。
困ってしまいますね。
お悔やみは申し上げましたが、なぐさめや励ましの言葉は言えませんでした。
もし自分が、娘に先立たれたばかりの母親の立場なら…、そう思うとそこから先の言葉は、
今ここで言うべきじゃないような気がしました。
お母さんの心の整理がついてくれば、自分からいろいろ話してくれると思ったのです。
さて、今回の本題です。
さて、今回の本題です。
初診で来られた患者さんが、リピーターになってくれたり、長い付き合いをしてくれるようになるまでには時間が必要ということを、ヒント集(7)で書きました。
患者さんの立場で考えてみると、階段を上って行くように、ワンステップずつ信頼感を積み上げていかれるのだと思います。
今回は患者さんの立場、気持ちになって考えてみたいと思います。
第1段階:注意・興味・疑惑 (治療に来られる前の心理状態)
知人に聞いてみたり、通りすがりに覗いてみたり、問い合わせの電話をかけてみたり、
どうしようか迷っている段階。
これから開業される方は、外から待合室が少し覗きみえるように工夫するといいと思います。
ただし、患者さんの顔が見えない程度に…。
電話の問い合わせに対しては、慎重さが必要です。
たとえば、
「これこれ、こういう状態なんですけど治りますか?」
と、聞かれたときに、「治ります。」と安請け合いしては後でトラブルの原因になります。
せめて、
「そういう方、結構来られますので、大丈夫と思いますよ。ただ、お体を診てみない事には
判断できませんので一度お越しください。」
くらいの受け答えがベターと思います。
第2段階:不安・心配 (初診時の心理状態)
「どんな治療をするのだろう。ハリは痛いだろうか、お灸がうんと熱かったらどうしよう…。」
「ちょっと恐そうな先生だけど、○○さんはやさしいから大丈夫って言ってたよなぁ。」
「毎日来いって言われたらどうしよう…。」
などと、初診時、患者さんは不安、心配のかたまりです。
問診のなかで、緊張をほぐすテクニックが少し必要ですね。
ハリやお灸への恐怖感が強い方には決まり文句を用意しておくといいでしょう。
私がよく使うのは
「子供達も結構来てますよ。最初のうちは恐がるけど、帰るときは、なぁ〜んだ、って顔して帰りますから大丈夫、心配しないでね。」
そして一番大切なことは、ヒント集(7)で書いた3つのことを忘れずに言っておくことですね。
第3段階:安心・信用 (まだ、ほんの少しだけですが…。)
2〜3回治療を受けて、治療内容や施術者に対し、少し安心感を持ち始める頃。
しかし、ちょっとしたことで不安を抱いたり、不信感を持ったりと、揺れやすい心理状態にあります。
したがって第2、第3段階では、患者さんにあまり負担感を与えないことが大切です。
たとえば、必要以上に家庭内のことやプライバシーに踏み込んだり、回数券をすすめる、
などといったことは不信感につながります。
第4段階:感動・共感 (鍼灸の効果を体感し始める頃)
鍼灸治療を標本同治(ひょうほんどうち;悪いところ、痛いところだけでなく、
その症状の大元にも治療を加える方法。)で行なっていると、主訴以外にも効果が現れて、
びっくりすることがあります。
たとえば、膝の治療に来ているのに
『眠りが深くなった』 『肩こりが楽になった』 『冷え性がよくなってきた』などと
いうのはよくあることです。
患者さんが自分の体で実感しますので、鍼灸に対して信頼が芽生えてきます。
ここで大切なことは、患者さん自身にも気づかせてあげることですね。
どうしても、つらいところにばかり意識が集中してしまっているために、体にそういう変化がおきていても気づかない方が多いのです。
初診時によく観察し、カルテに記録しておくことにより、その変化に気づいてあげてください。
「ベッドまでの歩く姿勢が良くなりましたね。」
「指先が前より温かくなりましたね。」
「舌の状態が良くなってきましたよ。」などなど。
それにより、自分から、
「そういえば、夜ぐっすり眠れるようになった。」とか
「脚のむくみが取れてきたみたい」などと、気づいてくれるようになります。
慢性疾患は簡単には治ってくれませんが、こうした小さな喜び、感動が
継続治療の意欲につながります。
第5段階からのつづきは後編で書きたいと思います。
Produced by かもめ針灸治療室
2006年05月16日
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